2023/08/25
「義務化が義務」富士山入山料の議論加速へ 値上げも検討 来夏までに方向性
■任意で1人1000円 静岡県の徴収率は57%
現在は登山者の任意となっている富士山の入山料について、静岡県の川勝平太知事が来年夏までに方向性を出すと明言した。入山料は「義務化が義務」との考えを示し、金額も現在の1000円からの値上げが必要か議論を加速していく。
富士山の登山をする人から任意で徴収している富士山保全協力金は、美しい富士山を後世に引き継ぐことを目的に2014年から始まった。協力金は臨時公衆トイレの設置といった富士山の環境保全に加えて、救護所の設置や運営、外国人サポートなど登山者の安全対策にも使われている。
この入山料は1人1000円で、登山者の任意となっている。新型コロナウイルス感染拡大で例年より登山者が少なかった昨年の徴収率は、山梨県側で初めて7割を超えた。静岡県側は57.3%にとどまっている。
入山料は静岡県と山梨県でつくる「富士山世界遺産協議会」に設置した専門委員会で、法定外目的税として義務化が検討された。しかし、入山ルートが複数あることから、徴収に漏れが出る可能性などを指摘され、義務化が見送られていた。
新型コロナによる行動規制が緩和された今夏は富士山の登山者が回復し、同時に危険が伴う弾丸登山やマナー違反の問題も起きている。川勝知事は22日の定例会見で「国宝である富士山の環境を守り、伝えていくためには登山者の増加に対応した自然環境の保護や登山者の安全管理が必要。その費用は登山者に公平に負担していただくことが望ましいと考えている」と述べた。
■川勝知事「義務化が義務」 議論加速させて来夏に方向性
川勝知事は報道各社の調査結果などを示し、登山者の大半は入山料の義務化に賛成していると説明した。一方、山小屋関係者からは反対の声が大きいことから「慎重に検討しながらも検討のスピードを早めてもらい、来年に向けて何らかの方向性を示せるように地元関係者と議論を深めるように指示した」と語った。川勝知事自身の考えとしては、次のように述べた。
「国立公園でもあるので、富士山の自然環境の保護は国民の義務。同時に、世界文化遺産になったので国際公約。義務化が義務だと思っている」
義務化への課題には、「登山者全員を捕捉できない」ことを挙げた。義務から逃れる登山者を防げるように「いかに公平に負担してもらうか」を論点とした。現在1000円となっている金額についても、適切かどうかを議論していくという。川勝知事は義務化に向けた議論を加速させ、来年の夏には方向性を示す考えを示している。
(SHIZUOKA Life編集部)