2023/09/17
1日で2つの市を体験 移住先の“ライバル”が異例のタッグ 初の合同イベント開催
■1日で沼津市と三島市を周遊 移住体験バスツアー初開催
最大のライバルとみられている2つの自治体が手を組んだ。静岡県の沼津市と三島市が8月、合同で移住イベントを開催した。移住者の獲得という面では強敵となる隣同士の両市は、共通のゴールに向かっている。
先月、静岡県内で画期的なイベントが実施された。沼津市と三島市による合同移住体験バスツアー。両市への移住に興味を持っている人を対象に、沼津市と三島市を案内した。
ツアー参加者は沼津駅に集合し、まずは沼津駅前の商店街を歩いた。そこからバスに乗って、住宅や商業施設のあるエリアを周遊。その後、実際に沼津市と三島市に移住した人との交流会が開かれた。昼食は沼津港で地元の海産物を味わい、午後からは三島市へ。三島市では楽寿園、源兵衛川、三嶋大社などを散策した。ツアー日程は両市の担当者が話し合って決めたという。
沼津市と三島市は隣接し、ともに静岡県の移住先として人気が高い。三島市には新幹線が停車する三島駅があり、首都圏への通勤で利便性が高い。一方、沼津市には三島駅から東海道線で1駅の沼津駅があり、山も海もある豊かな自然が魅力となっている。移住者の獲得ではライバルになる両市。タッグを組んだ経緯を沼津市移住定住推進室の栗田陽平さんが説明する。
■沼津と三島 行政区は違っても生活圏に大差なし
「移住希望者が、より移住を考えやすい、決定しやすいように2市でやろうという形になりました。沼津と三島で行政区が分かれていても、生活圏に大きな違いはありません。移住先として最終的にはどちらかを選んでもらう形になりますが、例えば沼津に住んで三島から新幹線で首都圏に通勤したり、三島に住んで車で沼津の海に行ったりするように、沼津と三島を1つのエリアとして見てもらうことも大事なのではないかと考えました」
バスツアーを企画する前に沼津市と三島市が移住者にアンケートを取ったところ、沼津と三島のどちらかへの移住を考えていたという回答が多かった。最終的に沼津と三島、どちらを選ぶのかは移住者の決断になるが、同じ生活圏に移住者を増やしたい思いは両市で共通している。協力することで相乗効果があると期待する。
バスツアー参加者からは「1日で2つの市を知ることができて良かった」といった肯定的な意見が大半を占めたという。特に好評だったのが、すでに移住している人たちとの交流会。両市から移住者を招き、「移住までの準備」、「実際に移住してからの悩み」、「比較した他の市町」など、移住希望者に本音を伝えた。沼津市移住定住推進室の栗田さんは「移住希望者の方に、三島市の移住者さんの声は私たちでは届けられません。合同ツアーだからこそのメリットだと感じましたし、参加者の方々も参考になる部分が多かったようです」と語った。
バスツアーに参加して、年内や年度内にも沼津市へ移住しようと動き出した人もいるという。市の職員はガイドのプロではないため、案内の仕方には課題が残った。それでも、参加者からの評判は上々で、実際に移住に向けた動きへとつながっている。合同バスツアーは12月に第2回の開催が予定されている。
(間 淳/Jun Aida)