2023/11/11
岸田首相が年内の解散断念 静岡県内は与党も野党も歓迎「選挙を戦える状況ではない」
■岸田首相は経済対策優先 背景には内閣支持率の低迷
岸田文雄首相は年内の衆議院解散を断念した。経済対策の優先を理由としているが、背景には危機的な支持率低迷がある。静岡県内の与野党関係者からは、解散見送りを歓迎する声が上がっている。
岸田首相は官邸で9日、記者団に対して「まずは、経済対策。先送りできない課題に一意専心取り組むこと以外考えていない」と述べた。物価高騰を受けた経済対策を進めるため、2023年度補正予算案の成立を衆院解散・総選挙よりも優先する意向を示した。
岸田首相が掲げる経済対策には、低所得世帯を対象に7万円を年内に給付し、1人当たり年4万円の所得税・住民税を行う内容が盛り込まれている。しかし、この経済対策は国民の賛同を得られているとは言い難い。各報道機関の世論調査では支持率が低迷。自民党が政権を取り戻した2012年以降初めて、内閣支持率は30%を切っている。
これで、衆院解散は来年以降に持ち越された。岸田首相は「勝てるタイミング」を探ることになる。静岡県内では与野党どちらの関係者からも、年内の解散見送りを歓迎する声が上がっている。
■自民党静岡県連「今の内閣支持率では戦えない」
県連役員は「30%に満たない支持率では選挙を戦えない」と口をそろえる。自民党を支持する個人や団体から厳しい意見が少なくないという。
県連役員が年内の解散が見送られたことに安堵する理由は、前回2021年衆院選の結果にある。磐田市や掛川市などを選挙区とする静岡3区と浜松市東区などを選挙区とする静岡8区で、自民党の候補者は野党の候補者に敗れた。どちらも比例で復活当選したものの、小選挙区での議席を失ったことに県連内には落胆と焦りが広がった。
特に、静岡8区は党の選対委員長や文科相を歴任した塩谷立氏が立憲民主党の源馬謙太郎氏に2万4000票近く差をつけられる惨敗だった。県連役員からは「今の岸田首相の支持率で選挙をしたら、比例復活さえできない結果になりかねない」と話す。
■「候補者調整が今まで以上に難しい」 野党は候補者乱立の可能性
一方の野党も「選挙を戦える状況ではない」と解散見送りに安堵した。衆院議員3人の現職がいる立憲民主党の関係者は「岸田首相の支持率が低下しているといっても、野党への支持が大きく広がっているわけではない。今の状況では有権者の選択肢となっていない。野党の存在感が薄いと批判されても仕方ない」と嘆く。
自民党候補者に対峙するために不可欠となる候補者調整も難航するとみられている。県内の選挙区には立憲民主、国民民主、維新、共産と野党候補の擁立が予定されているが、候補者が乱立すれば野党票はばらけて、結果的に自民党が利する形となる。立憲民主党の関係者は「今の野党は政策やスタンスの違いが大きい。次期衆院選は、これまで以上に野党内での候補者調整が難しくなるだろう」と話す。
解散は来年以降となり、1月召集の通常国会冒頭や秋に予定されている自民党総裁選後などが選択肢となる。与野党ともに選挙対策に割ける時間が増えた。だが、猶予が与えられたことによる明るい材料は、今のところ与党にも野党にも見られない。
(SHIZUOKA Life編集部)