2023/11/23
上手い話にワナ 無料掲載のはずが高額費用請求 多発する求人広告トラブル
■事業者間の契約 求人広告はクーリングオフ対象外
幅広い業種で深刻な人手不足が続いている。人材獲得の手段の1つとして活用されているのが求人広告。しかし、無料掲載をうたった勧誘を受けた後、高額な費用を請求されるトラブルが全国で相次いでいる。静岡労働局も注意喚起している。
厚生労働省によると、電話で「無料で当社のサイトに求人広告を掲載しませんか?」という勧誘を受けて契約したところ、電話などで十分な説明なく高額な料金を請求されるトラブルが最近増えている。申込書の目立たないところに小さな文字で「無料掲載期間経過後に自動で有料掲載へ移行」などと記載されている。
求人情報の掲載や広告料金を請求すること自体は違法ではない。だが、無料掲載に期間が設けられ、その後は有料になるシステムを把握していない状態で契約していることからトラブルへ発展している。厚生労働省や静岡労働局は「事前に広告料金や掲載期間、無料掲載期間終了後の料金、解約方法などを確認した上で契約してください」と呼びかけている。
契約内容に納得がいかない場合、一定期間内であれば無条件で契約を解除できる制度にクーリングオフがある。ただ、クーリングオフの対象は消費者。求人広告のように事業者間の取引は含まれない。
弁護士に相談して裁判を起こし、契約の無効を訴える方法はある。「有料へ移行することに関する説明が十分だったか」、「勧誘してきた業者が同じようなトラブルを他でも起こしていないか」などを争うことはできる。しかし、請求額は30万円前後が多く、弁護士費用や裁判の労力を考えると躊躇(ちゅうちょ)するケースが大半だという。
■トラブルの背景に人手不足 半数以上の企業が直面
求人広告をめぐるトラブルが多発している背景にあるのが、深刻な人手不足。民間の調査会社・帝国データバンクによると、今年7月時点で正社員の人手不足を感じている企業の割合は51.4%に上り、7月としては過去最高を更新した。中でも、情報サービスは74.0%、旅館・ホテルは72.6%と高かった。賃金を上げるなど対策を講じても、求める人材が集まらないのが現状だ。
人手不足に悩む企業をターゲットにした「無料掲載」という甘い誘惑。痛い目にあわないためには、契約内容を正確に把握したり、詳細な説明を求めたりする必要がある。
(SHIZUOKA Life編集部)