2023/12/20
家づくりに失敗する人の共通点 数字にも“落とし穴” 職人社長が後悔しないポイント解説
■「家は人生を豊かにする手段」 金額と見た目の重視に警鐘
家づくりに失敗する人には共通点があるという。磐田市の工務店「平松建築」の社長、平松明展さんは「家は人生を豊かにするための手段」と強調する。見た目や金額、営業マンの言葉を重視して家づくりを進めると、後悔する可能性が高いと指摘。住宅会社がアピールポイントとする数字にも“落とし穴”がある。
人生で最も高い買い物と言われる住宅。数千万円のローンを組んで、30年、35年をかけて返済するのが一般的だ。もしも家づくりに失敗したら、ショックや後悔は簡単には消えない。
大工の経験を10年積んだ後に独立した平松建築の“職人社長”平松さんは「金額と見た目で購入してしまうと失敗する傾向が高いです」と指摘する。家づくりの相談に来たお客さんに対しては「目的から考えることが基本」と伝えている。
「家は豊かな人生を送る手段です。家を建てたら人生が豊かになるのか、そもそも家を建てる必要があるのかを考えてから家づくりを進める必要があります。家を建てることが目的ではありません」
平松さんは家族構成や将来的な家計の収入と支出など、お客さんの情報からライフプランを立てていく。そして、人生を豊かにするために、どんな家が必要なのかを提案する。場合によっては「家を建てない方が幸せな人生が送れると思います」とアドバイスすることもある。
■耐震性と湿気に強い構造でリスク削減 家を生命と資産のベースに
平松建築が掲げるのは「人と地球と家計に優しい家づくり」。家を建てると決めた人に対しては、耐震性と湿気に強い構造を中心に説明する。平松さんが語る。
「住宅で大きなリスクになるのは地震と水です。そのリスクを軽減できる家は生命と資産のベースとなります。それに加えて、コストを最小化すれば貯金が増えるわけです。私たちの会社では、光熱費やメンテナンス費用、固定資産税や最終的な売却まで考えて家をつくります。次の世代の子どもたちに負担がかからない提案をしています」
住み心地の良い家の条件に挙げられるのが、「夏は涼しく、冬は暖かい」状態を実現する断熱性。ただ、断熱性と省エネに優れた家をつくろうとすると、冬は室内と屋外の温度差が生まれて結露が生まれやすくなる。コップに水滴がつくように結露が出て、家が傷んでしまうイメージだ。
そこで、品質の良い家にするには、湿気が入っても抜けるつくりにする必要がある。断熱性を高くした上で結露を防ぎ、さらに耐震性を強化する。このハードルをクリアする丈夫で長持ちする家づくりに、平松建築は重点を置いている。平松さんは言う。
「断熱性を高くするだけなら、断熱材を厚くしてUA値(室内の熱がどのくらい外へ逃げやすいか示す数値)を高くすれば良い。そこに耐震性の高さを加えて、100年先まで見据えた家づくりをするところに難しさがあります。それができていない企業は多いと感じています」
■「数字はつくれる」 営業マンの言葉を鵜呑みにしない
平松さんは企業が示す情報や営業マンの言葉を鵜呑みにしないよう忠告する。例えば、住宅で漏水した場合は住宅瑕疵担保責任保険が適用される。しかし、壁の中に湿気がたまって結露した結果、住宅に不具合が生じて修繕しようとしても保険適用外になる。平松さんは「企業が気付いていないのか、気付いているのにお客さまに伝えていないのか。いずれにせよ、責任を負うのは住宅の購入者です」と注意を促す。
さらに、平松さんは「数字はつくれる」と指摘する。住宅に隙間がなく気密性の高さを示すC値は、建物の中と外の圧力差を表す。この数字を良く見せるには、キッチンやリビングを目張りして隙間をなくす方法がある。
だが、言うまでもなく目張りをして日常生活は送らない。平松さんは「住宅業界は数字が良い方が売れるという観点になっているのが現状です。本来は快適な家をつくるために出す数字が家を売るための数字になり、それに消費者が惑わされています」と語る。そして、こう続けた。
「現場を理解せずにマーケティングや経営の上手い企業が幅を利かせると、快適さと逆行した家が増えてしまいます。そのルールを変えたい。真面目にモノづくりをしないと儲からない仕組みにしたいんです。家をつくることは売上の手段ではなくて、家自体に価値を持たせなければいけないと考えています」
どんな業種でも、企業は消費者の関心を引く言葉を並べる。その情報は本当に正しいのか。人生を豊かにする選択なのか。失敗しないためには、購入者自身で確かめる必要がある。
(間 淳/Jun Aida)
■平松建築の公式Instagram
https://www.instagram.com/hiramatsu__kenchiku/