2024/01/07
転職希望者6人に1人 20代から50代まで幅広く大幅増 収入以外の要因も
■転職希望者初めての1000万人超 前年から67万人増加
転職希望者が大幅に増えている。総務省による最新の調査で初めて1000万人を超えた。売り手市場が転職の追い風になっていることで、収入や労働環境への不満が表面化している側面がある。自身の成長やモチベーションにつながらない職場環境を理由に転職している人も多い。
総務省が労働力調査の推計値を発表し、2023年7~9月平均で転職希望者が1035万人に上った。四半世紀ベースで1000万人を超えたのは初めてとなる。就業者の数は全国で6768万人のため、6人に1人が転職を希望している計算となる。
年齢別に見ると、最も多かったのは「25~34歳」で273万人だった。「45~54歳」の243万人、「35~44歳」の226万人が続き、20代から50代まで転職を希望している年代は幅広い。「55~64歳」も140万人となっている。
転職希望者は2021年までの10年ほどは800万人前後で推移していた。2022年は前年から71万人増えて968万人。2023年の推計値も67万人増加とペースが大きく上がっている。
転職を希望する人が増えている背景には「売り手市場」がある。人材不足に悩む業種は多く、条件の良い職場を求めて行動するチャンスは大きくなっている。また、終身雇用や仕事自体に対する考え方が変化している影響もある。
■「尊敬できる人がいない」 転職理由10位から4位に上昇
実際に転職を決めた理由も、ここ数年で変わってきている。転職情報サイト「doda」が2023年に発表した調査によると、転職した理由の上位は以下の通りになった。
【転職理由ランキング】
※複数回答可。カッコ内は前回調査の順位
①(1)給与が低い・昇給が見込めない 8%
②(2)キャリアアップが望めない 2%
③(4)社内の雰囲気が悪い 4%
④(10)尊敬できる人がいない 9%
⑤(7)業界・会社の先行きが不安 4%
理由のトップは「給与が低い・昇給が見込めない」だった。順位は前回と変わっていないが、選択した割合は2.2ポイント減少している。順位を大きく上げたのは4位の「尊敬できる人がいない」。トップ10の中では、7位の「人間関係が悪い」も前回の12位から大幅にアップ。仕事内容以上に、先輩や上司が転職の理由になっている傾向が表れている。
静岡県内で離職率の高い企業からも、dodaの調査結果と同様の声が漏れている。この企業は最近2、3年で退職者が社員全体の4割を超えている。給与の水準はかなり高いものの、会社の将来を担う役割を期待する20代後半から40代前半の離職者に歯止めがかからないという。
「能力の高い人ほど、目先の給料でつなぎとめることが難しくなっています。自分の成長を感じられない、知識や技術を学ぶ先輩や上司がいないという職場環境が原因だと感じています。優秀な人材が次々と抜けるので、職場の雰囲気が悪化する悪循環です」
転職の選択肢が増えれば、理想の職場を求める人が増加するのは自然な流れと言える。人材を獲得できるのか、流出させてしまうのか、企業の力が問われている。
(SHIZUOKA Life編集部)