2024/01/09
能登半島地震 なぜ被害のなかった静岡県知事がトレンド入り? 過去の災害時でも…
■川勝知事は「新年のつどい」優先 静岡県だけ代理出席
能登半島地震の発生から1週間が経った。今も活発な地震が続き、被災地では雨や雪による土砂崩れや寒さの注意も呼びかけられている。今回の地震で静岡県内には大きな影響がなかったものの、静岡県知事がX(旧:Twitter)のトレンドに入った。
静岡県知事のワードがXのトレンドに入ったのは、能登半島地震5日後となる1月6日だった。一部メディアが、4日に開催された中部9県と名古屋市の連絡会議を川勝平太知事が欠席したと報じたことがきっかけだった。
この連絡会議は能登半島地震を受け、幹事を務める三重県が呼びかけてオンラインで開催された。中部9県と名古屋市は災害時に物資を届けたり、人材を派遣したりする応援協定を結んでいる。
今回の会議には各県の知事と名古屋市長に加えて、2011年に東日本大震災を経験した全国知事会長の宮城県・村井嘉浩知事も参加した。ところが、静岡県だけは知事ではなく、県危機管理監が出席した。
■連絡会議前の会見では被災地支援を強調
会議の代理出席自体は問題ない。緊急時や体調不良でやむを得ないケースはあるだろう。だが、川勝知事が欠席した理由は政財界の要人が集まる地元メディア主催の「新年のつどい」の参加を優先させたためだった。
新年のつどいが先に入っていた予定だったとはいえ、正しい判断だったのか疑問を投げかける声は小さくない。川勝知事の新春会見での発言が、批判の声を大きくした要因にもなっている。連絡会議の前に開いた新春会見で、こう話している。
「被災市町の災害対策本部の機能を支援する災害マネジメント支援チーム4人が、昨日(3日)から石川県穴水町に入っています。東日本大震災の時に1週間以上経って全国知事会の方から岩手県担当と言われましたが、今回は穴水町と要請されて丸2日で入ったので喜んでいます。穴水町の担当は本県だけなので徹底的にやりたいと思っています」
川勝知事は会見前に行った幹部職員対象の仕事始めでも、「能登半島地震は他人事ではない」と強調していた。被災地への迅速な支援、長期的な支援の必要性を訴えていながら連絡会議に代理を立てた判断に、Xでは批判が集まり、静岡県知事がトレンドに入った。
■台風や新型コロナの対応でも…判断に疑問の声
緊急対応で川勝知事が全国的に関心を集めるのは珍しくない。記憶に新しいのは2022年9月に起きた台風15号の豪雨災害。静岡市や島田市で約600世帯が孤立し、静岡市清水区では6万3000戸で断水が発生した。
断水の原因となっていた取水口のがれき撤去や給水を支援する自衛隊が派遣されたのは、災害発生から3日後。他県で同様の豪雨災害が発生した際は県知事が翌日に災害派遣要請していることから、対応の遅れを県内外で指摘された。
この時、川勝知事は「県としては災害派遣要請の準備をしていたが、残念ながら市町から声が上がってこないのでじりじり待っていた」と説明した。災害対策基本法などによると、市長や町長は県知事に自衛隊の派遣要請を求め、知事は国に要請できる。
川勝知事は「じりじりと待っていた」と話したが、静岡市長に自衛隊の派遣要請を促す方法はあった。だが、互いに連絡先を知らない市長との不仲も原因となり、対応が後手に回った。
新型コロナウイルスが猛威を振るい、行動が規制されていた2021年の年明けも批判を受けた。この時期は感染者が増加しており、県民に対して「不要不急の外出は控えてほしい」、「帰省は我慢してください」と繰り返していた。
だが、川勝知事は2020年の年末から2021年の年始にかけ、軽井沢で過ごしていた。普段は公舎で過ごしている川勝知事の自宅は軽井沢にある。車で移動して夫人と2人で過ごしたため、「感染リスクはない」、「帰省にはあたらない」と説明。静岡県に滞在すると会食の誘いがあるなどと述べた。
今回、「静岡県知事」がXでトレンド入りした際、「なぜ、静岡県民は川勝知事を選んだのか」といった声が少なくなかった。緊急時こそ組織のトップは能力を問われる。違った形で他県に注目されることが県民の願いだろう。
(SHIZUOKA Life編集部)