2024/01/28
2024年問題に6割の企業がマイナス面 ブラックなイメージ払拭に期待するプラスの声も
■長時間労働改善期待も 人手不足や業務停滞の懸念
「2024年問題」が間近に迫っている。卸売、製造、運輸といった業界を中心に、約6割がマイナス面の影響を見込んでいる。一方、静岡県内には「業界のブラックなイメージを払拭できる」と話す運送業もあり、一部ではプラスに捉えている企業もある。
トラックやタクシードライバー、医師などの働き方改革を進めるため、適用が猶予されていた時間外労働の上限規制が2024年4月に適用される。長時間労働が改善される効果が期待される一方、人手不足に拍車をかけたり、業務が停滞したりする懸念もある。いわゆる、「2024年問題」だ。
民間の調査会社・帝国データバンクによると、2024年問題は「マイナスの影響がある」と回答した企業は59.9%だった。「影響がない」の22.3%、「プラスの影響がある」の1.6%を大きく上回っている。
中でも不安視されているのが物流。「マイナスの影響がある」との回答は68.6%に上っている。業種別では「卸売」が79.6%で最も高く、「農林水産」、「建設」、「製造」、「小売」、「運輸・倉庫」と6つの業界で70%を超えている。
不安の理由は物流コストの増加、人件費の増加、人手不足の悪化が上位を占める。2024年問題によって物流コストが増加し、製品単価が上昇して景気が後退するといった指摘や、1人当たりの仕事量が減った分、新たな人を雇用する人件費がかかるという声も上がっている。
■負のイメージ払拭で中・長期的な人材獲得に期待の声
一方、静岡県内には前向きな意見もある。ある運送会社は「中、長期的に見ればプラス面もある」と捉えている。長時間労働のイメージが強い運送業界のブラックなイメージを払拭し、人材獲得につながる可能性があると期待する。
また、運送費の適正価格につながると指摘する。「企業として健全な経営をするには、現在の運送費は安すぎる。値上げすれば仕事を失うかもしれないので、運送業化の立場は弱い」と話し、2024年問題は運送費の値上げに理解を示してもらいやすいと前向きに考えている。
この運送会社は時間外労働の上限規制を見据えて、すでに対策に乗り出している。業務内容を見直し、DX化を推進。配送ルートの効率化が進み、現在働いているドライバーの時間外労働が2割近く減ったという。
帝国データバンクは調査結果について「現状の課題解決に資する対策だけでなく、DXの力強い推進や新技術の開発・利活用など将来を見据えた効率化や業務改善が必要になってくる。政府には十分な金銭的な支援だけでなく、個社だけの対応や一部の業界だけが負担をかぶることにならないような制度や体制づくり、企業の取り組みを継続的に後押しする政策が求められている」とまとめている。
今回の調査は2023年12月18日から2024年1月5日まで、全国2万7143社を対象に実施された。有効回答企業数は1万1407社で、有効回答率は42.0%だった。
(SHIZUOKA Life編集部)