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2024/02/17

グラブにボール入れたまま…大谷グラブ活用できない 小学校の悩みを高校球児が解決

大谷グラブをはめてペットボトルの的当てを楽しむ小学生

■「キャッチボールで相手を思いやる経験してほしい」

宝の持ち腐れになってしまう。小学校からのSOSに応えたのは地元の高校球児たちだった。静岡県富士市にある富士高校の野球部が、ドジャース・大谷翔平選手から届いた「大谷グラブ」の活用法に悩む岩松北小学校の児童を対象にした野球教室を開催した。県東部有数の進学校の強みを生かし、野球教室の前には学習でも“先生”を務めた。

 

ドジャース・大谷翔平投手が全国の小学校に贈ったグラブは富士市にも届いた。ただ、昭和生まれの人たちには想像できないかもしれないが、最近はグラブをつけたことがない児童が少なくない。右利き用のグラブを渡されると右手にはめたり、ラクロスのようにグラブのウェブ部分でボールをつかんで反対の手に握り替えずにそのままボールを投げようとしたりする児童もいるという。

 

岩松北小学校も大谷グラブに感謝しながらも、もっと有効的に活用したいと考えていた。そこで、協力を依頼したのが、2キロほど離れた距離にある富士高校の野球部だった。岩松北小学校の望月敏行校長は「野球人口を増やすのは簡単ではないかもしれませんが、野球教室の経験豊富な富士高校の力を借りて、子どもたちがキャッチボールで相手を思いやる経験をしてほしいと思いました」と話す。

 

富士高校野球部は2022年4月に稲木恵介監督が赴任してから、野球振興や地域貢献を目的に園児や小学生を対象にした野球教室を開催している。稲木監督は前任の三島南高校で野球部員による野球教室をスタート。野球教室の開催は富士高校に来てから今回が10回目、三島南時代を含めると46回目となる。

野球の楽しさを小学生に伝える冨士高校ナイン

野球教室の前には教室で勉強

■高校球児も野球離れ実感「高校野球が衰退してしまう」

野球教室には児童30人以上が参加した。野球チームに入っているのは1人だけで、キャッチボールの経験がない児童も多かった。野球部の選手たちは柔らかいボールを使い、野球の楽しさを伝えるメニューを考えた。

 

大谷グラブを活用するために捕球するコツを伝え、ペットボトルを並べた的当てやティースタンドを使った打撃、野球のルールを分かりやすくした三角ベースの試合などを一緒に楽しんだ。

 

野球離れは選手たちも実感している。岩松北小学校出身で、富士高校で生徒会長を務める藤田理一選手は「自分たちが小学生の頃と比べて、学童野球のチーム数が減っています。この間、学童野球のトーナメント表を見たらチーム数が少なくて驚きました。野球をする小学生が減れば、高校野球も衰退します。野球の楽しさを伝えて、少しでも競技人口を増やしていければと思っています」と語る。行動を起こさずにはいられない危機感を抱いている。

 

進学校の特徴を生かし、野球教室の前には50分間、学習の時間を設けた。学年別に児童を教室に分け、選手たちが質問に答えた。児童が勉強する様子を眺めていた望月校長は「こんなに集中して勉強する子どもたちを見るのは初めてです」と笑顔を見せた。参加した児童の保護者からは「子どもがずっと笑顔で終了後は楽しかったと繰り返していました。社会ではリーダシップの必要性がうたわれていますが、富士高校野球部の生徒たちはすでに、その力を培っており、高校生とは思えない人間性に感心しました」と感想が寄せられた。

 

藤田選手も「大人に聞くよりも年齢の近い高校生の方が話しやすいと思います。勉強も含めて楽しい時間でした」と充実感をにじませた。大谷グラブをきっかけに生まれた小学生と高校生のつながり。高校野球のゴールは甲子園出場だけではない。

 

SHIZUOKA Life編集部)

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