2024/03/14
大手企業の賃上げ 歓迎しない中小企業も 「格差拡大」や「値下げ要求」の不安
■春闘の集中回答日 大手企業から相次ぐ満額回答
春闘の集中回答日で、大手企業から満額回答が続出している。中には、労働組合の要求を上回る回答を出す企業もある。従業員の給与アップを歓迎する声が上がる一方、中小企業からは不安の声も上がっている。
13日は春闘の集中回答日となり、大手企業から大幅な賃上げが相次いだ。トヨタ、日産、ホンダといった自動車メーカーは各社が満額回答。日本製鉄は労働組合が要求した3万円のベースアップに対し、それを上回る3万5000円の回答を出した。約50年ぶりの高水準だという。
静岡県内の大手企業でも同じ傾向となっている。スズキは組合の要求を超える平均10%以上の賃上げを回答。ヤマハも組合の要求通り、1万3000円のベースアップと年間一時金5.2か月分の満額回答となった。ヤマハ発動機や浜松ホトニクスなどでも組合が納得する回答が相次いだ。
記録的な物価高が続く中、経団連が目標とする4%以上の賃上げ率の達成は確実となっている。ただ、大手企業と中小企業の温度差は大きい。日本全体で99%以上を占めると言われている中小企業は必ずしも、大企業の大幅な賃上げを歓迎していない。
■中小企業は悲鳴「企業体力と見合わない賃上げせざるを得ない」
静岡県内の中小企業からは、「大企業との格差拡大」や「値下げ要求」の不安が漏れる。中小企業にとって、岸田文雄総理が掲げる物価高以上の賃上げは楽ではない。だが、賃上げしなければ人材が流出し、人手不足に拍車がかかる可能性がある。中小企業の経営者の1人は苦しい現状を語る。
「人材確保や従業員のモチベーション維持のために企業体力と見合わない賃上げをせざるを得ません。それでも大手企業と比べると賃上げ率は低くなります。今は大手も人手不足なので、中小企業が人材を確保するのは非常に大変です」
さらに、もう1つの懸念が大企業からの値下げ要求だ。公正取引員会は今月、日産自動車が下請け業者に対して納入金額の減額を少なくとも数年前から要求していたことが明らかになったが、下請けとなる中小企業の立場は弱い。減額の強要とまでいかなくても、値下げしなければ取引をやめて別の企業に変える意向をにおわせる大手企業の発言は珍しくないという。
「大手企業が順調に売上を伸ばせば、賃上げに見合う利益を上げられると思います。ただ、そうならなかった時、経費削減が利益を増やす方法の1つとして、中小企業に減額を求める可能性はあります。政府は大手企業しか見ていないので、中小企業は苦しくなる一方だと思っています」
岸田総理は大手企業の賃上げを評価し、中小企業への波及に向けてあらゆる手を尽くすとしている。だが、その言葉が中小企業の不安を解消するには至っていない。
(SHIZUOKA Life編集部)