2022/09/02
静岡県は新型コロナ感染者の全数把握を当面継続 全国で足並みそろわないワケ
■国は全国一律の移行方針も運用開始は宮城、茨城など4県のみ
新型コロナウイルスの感染者の全数把握が2日から一部の県で見直される。国は全国一律の運用に移行する方針だが、静岡県など一部の自治体は当面、従来の運用を続ける考えを示している。全数把握の見直しは医療機関や保健所の負担軽減が期待される一方、自治体には医療サービスが行き届かない懸念がある。
新型コロナの陽性が判明した場合、全ての人が発生届の提出を義務付けられている。この全数把握は新規感染者の数を把握することに加えて、感染者の個人を特定することで隔離や外出自粛などの措置を取って感染拡大を防ぐ目的がある。保健所は感染者に連絡して外出していないかを確認し、必要に応じて行政が食べ物や生活必需品を届けている。
全数把握は感染を広げない方法として有効と考えられているが、医療機関や保健所の負担が指摘されていた。医療機関は患者の陽性を確認すると、感染者の情報を入力し、保健所などと共有する。入力する項目は細かいものを含めると20以上に及ぶという。
今回、国が打ち出した全数把握の見直しでは、発生届の対象を「65歳以上の高齢者」、「妊婦」、「入院が必要」、「重症化リスクがあり、新型コロナの治療薬や酸素投与が必要」と4つのケースに限定した。対象外の感染者は届出の必要がないため、隔離対象から外れて外出自粛を要請されなくなる。
国は全国一律で全数把握の見直しを目指していたが、全ての自治体から理解を得られず、2日からの運用開始は宮城、茨城、鳥取、佐賀にとどまった。この4県では重症化リスクの高い患者を除いて、感染者の年代と総数を報告するのみに簡略化する。
■静岡県は当面従来の運用継続 重症化リスク高い患者を見落とす懸念
静岡県は当面、今まで通りの運用を継続する。県によると、全数把握を見直すと、発生届の数は8割以上減る。医療機関や保健所の負担は大幅に軽減する。しかし、重症化リスクの高い人を見落とす可能性があるという。
例えば、これまでに薬や酸素の投与が不要と判断されたが、合併症で亡くなった感染者がいる。このケースは、国が今回示した全数把握の見直しで対象から外れる。また、治療薬の投与は12歳以上かつ体重40キロ以上とされているため、小学生以下の大半は対象外となっている。
さらに、県は必要な人に行政サービスが届かない懸念があるという。対象から外れた感染者の情報は年代しかないため、個人を特定する情報はない。食べ物の支援や体調面に関する報告や相談は、感染者自身が申し出る必要がある。また、対象外となった感染者に外出自粛を要請する手段がないため、感染拡大のリスクは高まる。
国は9月中旬に全国一律での全数把握見直しを目指している。ただ、静岡県のように不安や疑問を感じている自治体があるため、足並みはそろっていない。全数把握の継続を希望する自治体は例外的に認める検討もされている。
(SHIZUOKA Life編集部)