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2022/09/04

嫌な仕事や苦手な仕事 静岡市の若手女性起業家が使い分ける2つの方法

静岡市で4年前に起業したVario’s合同会社の石光代表

■ホテルや保険会社勤務を経て30代半ばで起業 Vario’s合同会社・石光代表

仕事をしていると、誰でも嫌な業務や苦手な業務に直面するだろう。それでも、放棄するわけにはいかない。静岡県静岡市の若手女性経営者は、「向き合う」と「任せる」、2つの選択を使い分けてきた。困難や問題をクリアする方法は1つではない。

 

静岡市でシングルマザーによる仕事代行などの事業を展開する「Vario’s合同会社」の代表・石光(せき・ひかり)さんは30代半ばで起業し、現在4年目を迎えている。会社を立ち上げる前は、ホテルや保険会社などに勤務していた。

 

保険会社では全国でもトップクラスの営業成績で表彰された経験もある。だが、入社して半年間は「毎日、辞めたいと思っていた」という。特に苦痛だったのは、社員が昼休みの時に規模の大きな企業を訪問する営業。挨拶をしても無視されるのは日常だった。

 

「保険の営業は、こんなにも嫌われるのかと感じました。契約が取れないという以上に、挨拶さえもしてもらえない状況が最初は耐えられませんでした」

 

■逃げ出したかった保険会社の仕事でトップセールス

石さんは営業先の企業に向かい駐車場に車を停めると、仕事を投げ出したくなった。「悩むと足が向かないので、何も考えず、まずは社員がいるフロアに向かいました。逃げたら負け、通い続けることで成長すると自分に言い聞かせていました」。とにかく負けず嫌いと自分の性格を分析する石さんは、どんなに冷ややかな態度で対応されても、訪問をやめなかった。

 

そして、営業を少しでも楽しく感じられるように自分の中でハードルをつくった。営業先の企業に行くと、最初は無視されたり、保険と口にしただけで会話を拒否されたりすることも多い。ただ、頻繁に顔を出していると、「保険屋さん」と呼ばれるようになる。1つハードルを越えた形だ。

 

契約は取れなくても訪問を続けると、今度は社名で声をかけられる。次のハードルをクリア。そこから、顔と名字を覚えてもらい、下の名前で呼ばれる関係性にまでなったらゴールとなる。石さんは「商品を売るのではなく、とにかく仲良くなろうと決めていました。下の名前で呼ばれると、だいたいの方が契約してくれました」と振り返る。

 

仲良くなるには相手を知る、相手に興味を持つことを心掛けた。時には、保険の契約をしていないにもかかわらず、本人に代わって孫の迎えに行った。人から頼りにされることに、やりがいや喜びを感じ「必要とされると心が満たされるのは、今の仕事でも変わっていません」と笑う。

 

■起業して知った人に任せる大切さ 役割分担で最大限の成果

一方、苦手な業務を全て自分でこなすわけではない。他の人に任せる必要性を訴える。特に、起業してからはスタッフの力を借りている。石さんが苦手にしているのは、細かい数字の計算。明細の処理といった作業は「思考が停止する」ほど苦手意識がある。信頼できるスタッフや税理士らに日常の業務は任せ、経営者として必要な数字を把握するようにしている。

 

事業の柱とするシングルマザーによる仕事代行でも、仕事を希望する人の研修カリキュラムはスタッフが作成する。石さんの役割はカリキュラムの狙いや、修正や調整のポイントを伝えるにとどまる。そして、最も得意とする営業に力を注ぎ、企業から代行する仕事を取ってくる。役割分担が、結果的に大きな成果を生むと考えている。

 

「私の一番の役目は、自分の思いと自社のサービスを企業に知ってもらい、1人でも多くのシングルマザーのために仕事を任せてもらうところです。たどり着いた答えは、苦手なことは人に任せる。もちろん、絶対に投げだせない仕事はやり抜きますが、餅は餅屋。苦手なことに時間を費やして、ストレスを感じるくらいなら、他の人に頼む方が自分にとっても、会社にとってもプラスになると考えています」

 

苦手な仕事や嫌な仕事から得られる知識やスキルはある。その分、犠牲にするものもある。「向き合う」のか「任せる」のか。使い分けが自分の負担を軽減し、成長や結果にもつながる。

 

(間 淳/Jun Aida)

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