2022/09/23
Bリーグ間もなく開幕 B2昇格を“至上命題”に課すベルテックス静岡のもう1つの使命
■チアダンス体験とバスケ体験 積極的に園児と交流
男子プロバスケットボールのBリーグが29日に開幕する。B3も1日遅れでレギュラーシーズンが始まり、B2昇格を目指すベルテックス静岡の戦いも幕を開ける。クラブはシーズンが始まると目の前の勝利に集中するが、シーズンオフは別の使命感を持って活動している。競技普及と地域貢献がプロスポーツチームの責務と考えている。
レギュラーシーズン開幕が2週間後に迫った9月中旬、ベルテックスのマスコットキャラクター・ベルティとクラブのスタッフは、静岡市清水区の「まつぼっくりこども園」を訪れていた。目的は、年長の園児を対象にしたチアダンス体験だった。
プロバスケットの試合は、試合前やハーフタイム中のチアダンスが特徴の1つ。ベルテックス静岡も専属チアリーダーズ「ベルーナ」が毎試合、会場を盛り上げている。この日はクラブスタッフの蔭山ひさ枝さんとベルティが、園児に振り付けを教えた。ポイントは「手足を大きく動かすこと」と「とびっきりの笑顔で踊ること」。園児たちはアドバイス通り、音楽に合わせて体を動かした。
まつぼっくりこども園では10月に運動会が予定されており、一部の園児はチアリーディングを担当する。藤田倫子園長は「ベルティが来てくれて園児は喜んでいました。初対面の人たちが来ると普段は固まってしまう子どもも楽しそうに踊っていました。運動会に向けてモチベーションが高まったと思います」と感謝した。
■週2~3日、園を訪問 「地域貢献は勝敗と同じくらい大切」
静岡市で活動するベルテックス静岡は、市内のこども園・幼稚園・保育園の訪問に力を入れている。チアダンス体験の他にも、シュートにチャレンジするバスケットボール体験も展開する。クラブの執行役員・下出恒平さんは、園児と交流を深める理由を説明する。
「プロスポーツチームである以上、勝敗は大事ですが、地元にどれだけ貢献できるかもプロチームに求められている役割です。競技以外の部分も同じくらい大切だと思っています。バスケットに触れる機会を増やし、チームを身近に感じてもらうためには、小、中学生だけではなく小さな子どもたちとも積極的に接していく必要があります」
クラブは現在、週に2~3日の頻度で静岡市内のこども園などを訪問している。その中で、下出さんは新たな役割を担う必要性も感じている。
「ボールの投げ方が分からない子どもや、弧を描いてシュートを入れる感覚がない子どもが多いことに驚いています」。
■時代の変化と新型コロナで運動能力低下 ボール遊びの楽しさ伝える
静岡県に限らず、子どもたちの運動能力は下降傾向にある。特に顕著なのが、ボールを投げる力。最近では静岡市でも空き地や公園が減り、安全面の問題から放課後に学校で遊ぶことは難しい。ボール遊びを禁止する公園も増えている。ボールの投げ方さえ分からない園児がいるのも当然だろう。
さらに、長期化する新型コロナウイルス感染拡大は子どもたちが外で遊ぶ機会を奪った。ベルテックス静岡は園児を対象にしたバスケットボール体験を通じて、ボールで遊ぶ楽しさを伝えている。選手がプレーする映像を見せたり、玉入れのかごを使ってシュートの仕方を教えたりすると、子どもたちはバスケットに興味を持っていく。好奇心や社交性も育まれる。
ファンを拡大するために、園児との交流は即効性がないかもしれない。だが、地道な活動こそが重要だと考えている。蔭山さんは「活動を通じてクラブを知ってもらいたいですし、自分たちのまちを好きなってほしいと思っています」と語る。下出さんは「世代や性別を超えて家族の共通の話題になるクラブにしたいです。そういう存在になれると自信を持っています」と力を込める。
B2昇格を今シーズンの至上命題に課すベルテックス静岡。勝利を追求しながらも、地域貢献の使命感が薄れることはない。
(間 淳/Jun Aida)
プロバスケットチーム「ベルテックス静岡@VELTEX_SHIZUOKA」が行ったチアダンス体験。
静岡市の「まつぼっくりこども園」の年長さんたちは5分間教わっただけで、このクオリティの高さです!#Bリーグ #チアリーダー #バスケットボール #ベルティ pic.twitter.com/8RO2LJPZYr
— SHIZUOKA Life/静岡ライフ (@LifeSHIZUAOKA) September 17, 2022