2022/09/24
挨拶やプレゼンがワンランク上がる「1秒の間」 静岡の元ニュースキャスターの伝える技術
■入社2年目でキャスター 赤間優美子さんが追求した正確さと分かりやすさ
シンプルでありながら、最も効果的な方法は、わずか1秒の間。分かりやすくニュースを伝える方法を追求し、たどり着いた答えだった。静岡県のテレビ局で入社2年目からニュースキャスターを務めた赤間優美子さんのコラム1回目のテーマは「分かりやすく伝える方法」。挨拶やプレゼンテーションでも活用できる「プロの技」がある。
私は静岡のテレビ局でニュースキャスターをしていました。原稿を読む時には、どうしたら「正確に」、「分かりやすく」伝えられるかをずっと考えていました。
ニュースの読み方やナレーションが上手いアナウンサーを参考にしたり、まねをしたりするのが習慣になっていました。今振り返ると、人と話す時も、テレビを見ている時も、無意識に色んな情報を耳に入れていました。15秒のCMでも、試してみよう、自分は気を付けようという部分がありました。
原稿を読む時や、人に何かを伝える時は、重要なポイントを理解してもらう話し方や工夫をしていました。アナウンサーは滑舌、声のトーン、スピードなど、様々な方法を磨いています。その中で、私は「間」を大事にしていました。
強調したいところを強く読んだり、ゆっくり読んだりするのが一般的だと思いますが、私がおすすめしたいのは「間を取る方法」です。大切なところや最も伝えたいところの前で、1秒だけでも間をつくると、その部分がすごく引き立ちます。「これから大事なことを言いますよ」というサインを出す意識です。1秒の間は短いようで意外と長いんです。聞く方も自然と集中すると思います。
■間をつくるところに印 自分の感覚よりも2~3倍ゆっくり
ナレーションが上手いアナウンサーは、間の使い方が絶妙です。私はニュースの原稿を下読みする時、間をつくる場所にマークをつけていました。簡単で効果的な方法なので、人前での挨拶やプレゼンのような発表の場で試してみてください。
注意するのは、自分が思っている2倍、3倍くらいゆっくり間を取ることです。1~2秒開けたつもりでも、後から映像を見直すと、間を取っているのが分かりにくい場合があります。特に、緊張していると間が短くなりがちで、話すスピードも速くなる傾向があります。間を取る時も、ゆっくり読む時も、大げさなくらいでちょうど良いと思います。
私は普段からニュースを読む練習を録音して、聞き直していました。自分の感覚とのずれを把握するためです。プレゼンをする際は練習を録音して聞いてみると、話し方が上達すると思います。
■テレビの中継はダンスと似てる!? 「120%で準備して60%出せればOK」
アナウンサーをしていた頃は、スタジオで原稿を読む以外に、生中継をする機会もありました。用意された原稿を読む時とは違った、伝え方が必要になります。まず、中継では一番伝えたいことを固めて、クライマックスに置きます。そして、そこまでの構成を組み立てます。どんな内容、映像、言葉でクライマックスに向けて上げていけば視聴者に伝わるのか、関心を持ってもらえるのかを考えます。
中継に使える時間や中継に入るまでの番組の流れによって、一番伝えたい内容を最初にもってくる場合もあります。どちらのパターンでも、原稿や話す内容を一言一句覚えることはありません。組み立てた構成を頭の中に入れて、話すべき内容と目の前にある景色や状況をリンクさせます。自分の気持ちを伝えるというより、見ている人が中継で何を知りたいのかを想像します。
私の感覚ではダンスと似ています。1つ1つの場面は別々のパートかもしれませんが、全体を流れで覚えて、自然に動けるようにするからです。やり直しができない一発勝負なので、中継前は何度も何度も練習します。カメラマンさんや音声マンさんを巻き込むので、面倒くさいと思われていたかもしれません。
予定していた内容を伝え忘れる時もありますが、引きずらずに割り切るのも大事です。120%の力で準備して、本番で60%出せればいいという気持ちで臨んでいました。
<プロフィール>
赤間優美子(あかま・ゆみこ)。神戸市出身。2014年に静岡朝日テレビにアナウンサーとして入社、夕方の情報ワイド「とびっきり!しずおか」で気象コーナーを担当。その後は4年間「県内ニュース」のキャスター。事件事故の取材や中継、選挙や台風の特番のMCも務める。また、時事ネタを中心に街頭インタビューで1000人以上の声を聞き、原稿執筆やVTR制作にも従事。そのほか、朝日放送の「朝だ!生です 旅サラダ」の中継コーナー、 静岡朝日テレビ開局40周年記念特別番組「池上彰と学ぶ なるほど!富士山7つの秘密」などに出演。