2024/11/20
103万円の壁で税収減少 自治体が行政サービス低下を懸念 県民からは「むしろチャンス」の声も
■鈴木康友知事「地方にとっては死活問題」
10月に投開票された衆議院選挙で国民民主党が看板政策に掲げた「103万円の壁」に対し、自治体のトップが反発している。静岡県の鈴木康友知事や浜松市の中野祐介市長らも税収減少や行政サービス低下に危機感を示している。一方、県民からは「むしろ、行政サービスが改善するチャンス」と相反する声も上がっている。
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103万円の壁は住民税に加えて所得税が課税されるラインで、年間の収入が103万円までは所得税が発生しない。このラインを超えないように勤務時間を調整した働き方を選ぶ人が少なくない。
国民民主党は103万円の壁が所得を減らし、人材不足にもつながっていると主張してきた。10月の衆院選では103万円を178万円まで引き上げる政策を掲げた結果、有権者から支持を受けて議席が大幅に増加。選挙結果や世論の声を受け、自民党や公明党は国民民主党との政策協議を進めている。
国民民主党が訴える103万円の壁を引き上げれば、国税の所得税だけではなく、地方税の個人住民税も非課税ラインが上がる。つまり、地方税が減収になる。そのため、全国各地の首長から不満の声が上がっている。
静岡県の鈴木知事も「地方にとっては死活問題になる」と危機感を募らせる。年収の壁が178万円に引き上げられた場合の減収額を算出しており、今月の定例会見では「税収が不足する部分にどのような財源措置をしていただけるのかを含めて、しっかりと議論していただきたいと思います。大変、懸念しております」と述べている。
■県民からは「行政サービスが改善するチャンス」の声も
浜松市の中野市長も税収減少への不安を隠さない。103万円の壁が178万円になると、年間200億円以上の減収になると試算。見直すべきは、地方税が含まれずに社会保険料が課税される「130万円の壁」と主張している。今月の定例会見では語気を強めて、次のように話した。
「そこ(103万円の壁)じゃない、それじゃないというのが正直なところ。働き控えという観点から、まずは社会保険料の仕組みに手を付けるべきだと思います。所得の再分配機能を果たすべき国税で考えるべきで、地方税も巻き込んだ税制は筋が違う」
税収が減ることで、自治体のトップは行政サービスが低下するリスクを口にしている。一方、静岡県民の中には、正反対の意見を持つ人もいる。
税収が減れば現在のサービスを見直すきっかけにつながることから「民間企業と比べて、行政には無駄が多い。現在の仕組みを見直して作業効率化につなげられるのではないか」、「行政サービスは時間も手間もかかりすぎ。いまだに手書きの書類を求められたり、ネットバンキングに対応していなかったり、時代が止まっている。経費削減を目的にITやAIを活用してすれば、むしろ行政サービスが向上すると感じている」などの意見がある。
税収の減少は自治体にとって頭が痛い問題かもしれない。ただ、何かを変えざるを得ない状況は現状を変える好機にもなる。
(SHIZUOKA Life編集部)