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2022/10/12

全国旅行支援スタート わずか30戸の集落が観光地!? 静岡県焼津市でタイムスリップ

江戸時代の集落が残る焼津市の観光地「花沢の里」

■歴史を感じさせる建物と自然が調和する「花沢の里」

政府の国内観光振興事業「全国旅行支援」が始まった。静岡県焼津市には、タイムスリップした感覚になる独特な空気と時間が流れる観光地がある。江戸時代からの集落が残る「花沢の里」。歴史を感じさせる建物と自然が調和した景観は、静岡県で初めて国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれている。

 

JR焼津駅から車で10分。市街地からも近い場所を訪れると、時が止まったかのような不思議な感覚に陥る。山の谷地にある「花沢の里」。江戸時代からの集落には、今も30戸ほどの住宅が残っている。そこには、住民の日常生活もある。

 

花沢の里は、歴史を感じさせる石垣と板張りの建物と豊かな自然が調和する。花沢川に沿って走る一本の街道。その街道沿いに面として連続して並ぶ石垣の建物が独特の景観を作り出している。

 

建物は増改築されているのも特徴で、花沢地区の歴史を物語る。焼津市歴史民俗資料館によると、江戸時代は和紙の原料にも使われるコウゾや、種子から採取した油を塗料に用いるアブラギリを栽培していたと古文書に記されている。

花沢地区の歴史を学べるビジターセンター

■「長屋門」や「附属屋」 花沢地区の歴史を物語る貴重な建物

明治時代になると、花沢地区にはミカンやお茶の栽培、養蚕が入ってくる。特に、ミカン栽培は盛んで、「嫁に行くなら花沢」と言われるほどだったという。これに伴って、建物はミカンの貯蔵のために附属屋を増築した。

 

中には、2つの建物の2階部分をつないで部屋にする「長屋門」と呼ばれる独特の構造がある。収穫期に季節労働者が宿泊する部屋として使われていた。主屋には養蚕用小屋裏がつくられた。建物自体は江戸時代の山村集落の伝統を残しながら、地区の生業の変遷が表れている。

 

地区の街道沿いにある「花沢地区ビジターセンター」は、観光客が建物の構造や歴史を知る貴重な施設。長年、空き家となっていたが、安全面と歴史的景観の維持を考慮し、文化庁と静岡県の補助を得て整備された。茅葺の主屋は江戸時代に建てられたもので、ミカンを貯蔵するために増築された「附属屋」、明治初年につくられたとされる「外便所棟」の3棟が残っている。

歴史的価値の高い石垣と板張りの建物が並ぶ

■歴史的景観が評価 静岡県初の国の重要伝統的建造物群保存地区

こうした花沢の里は歴史的景観を高く評価され、2014年に静岡県で初めて国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。これは、文化財保護法に規定する文化財種別の1つで、城下町や宿場町、農村や漁村などが対象で、環境を保存するために、市町村が定める地区を指す。

 

歴史的価値が高い建物と豊かな自然が調和し、江戸時代の面影を残す花沢地区には、観光客を惹きつける魅力がある。ただ、約30戸の集落には今も住民が生活している。街道は狭く、車がすれ違うのは難しい。観光客には専用駐車場が設けられている。住民の日常を妨げず、景観を守っていくために、観光客のマナーが問われているのは言うまでもない。

 

(鈴木 梨沙/Risa Suzuki

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